薬事法における郵便等販売とは

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インターネットで薬が買えるのは消費者にとってはメリットです。しかし薬剤師などの専門家がいない状況では、薬について質問することができません。国民の安全と利便性の観点から、ネットでの医薬品の売買を巡って薬事法は2度改正され、2023年(令和5年)では現行の制度に至っています。

薬事法改正の経緯と郵便等販売の意味、消費者の注意点と販売者の義務などについてまとめました。

薬の販売方法を巡る薬事法改正の経緯

薬事法は医薬品や化粧品、医療機器などの規制対象となる物品の品質・有効性・安全性を確保することによって、国民の保健衛生の向上を図ることを目的としています。インターネットが普及すると医薬品販売の監督官庁である厚生労働省は、通知を発令して胃腸薬やコンタクトレンズ装着液などの薬効が比較的緩やかなものに限ってネット販売を許可していました。

やがて通知にはない医薬品をネット販売する事業者が続出するようになり、厚労省は行政指導を始めます。同時に、当時問題となっていた薬事法の課題を解決する必要性も感じていました。薬事法では薬剤師の店舗での常駐が定められていましたが、ドラッグストアなどでは守られていなかったからです。

薬の販売を巡って、最初の薬事法改正が行われたのは2006年(平成18年)6月です。完全施行されたのは、3年後の2009年(平成21年)6月でした。

この間に登録販売者制度や、リスク区分に対する考え方が整備されます。今回の改正の主旨はネット販売の禁止ではなく、セルフメディケーション支援のために、一般用医薬品の販売に関して適切な専門家を配置して販売体制を見直すことです。

これに伴い、一般用医薬品はリスクの程度に応じて3つに分類されました。

第一類医薬品は一般用医薬品としての使用経験などが少ないなどの理由で、安全上特に注意が必要な成分を含むものです。第二類医薬品は稀に入院以上の健康被害を生じる可能性のあるもので、風邪薬や解熱剤などが該当します。

第三類は整腸薬などの、軽い体の変調・不調が起きるおそれのあるものです。第一類医薬品を販売する際は、薬剤師が書面で購入者に情報提供することが義務づけられました。第二類医薬品に関しては、薬剤師か登録販売者が情報提供することが努力義務となっています。

購入者からの相談に関しては第一類は薬剤師、第二類・第三類は薬剤師か登録販売者が相談に応じることが義務づけられました。販売と情報提供、相談への対応を紐づけることで、一般用医薬品の販売の際に専門家が一定時間以上、店舗に常駐することになりました。

インターネットでの一般用医薬品の販売の範囲については、薬事法改正後に厚労省と政府の規制改革会議が対立します。販売時に情報提供の義務のない、第三類医薬品のみを対象とするというのが厚労省の考えです。

規制改革会議は、旧法下で認められていた販売範囲が狭められるとして、これに反対しました。2009年(平成21年)6月に厚労省が先の内容で省令を施行しますが、先立つ2009年(平成21年)5月にネット販売事業者が国を相手取り、医薬品のネット販売を行う権利の確認と、ネット販売を禁止する省令の無効確認・取り消しを求めて提訴しました。

2013年(平成25年)1月、最高裁判所は第一類・第二類医薬品を一律にネットで販売することを禁止する厚労省の省令を、薬事法の委任の趣旨に適合しないため違法としました。最高裁の判決は、一般用医薬品のネット販売の事実上の解禁でした。

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2013年(平成25年)12月の薬事法改正

ネット購入した医薬品によって購入者が肝障害を起こすなど、いくつかの事件や事故を把握していた厚労省はこれを懸念し、2013年(平成25年)12月13日に再び薬事法を改正、2014年(平成26年)6月12日に施行しました。

この改正によって、一般用医薬品の第一類に分類されていたもののうちの、スイッチ直後品目と劇薬が「要指導医薬品」として新たに分類されました。スイッチ直後品目とは医療用医薬品から一般用医薬品に移行して間がなく、リスクが確定していないものです。

原則として3年で一般用医薬品となりますが、それまでは対面販売が義務づけられています。そのほか薬局や店舗、販売方法や販売記録などについて細かく決められました。その中の1つに「特定販売」があります。特定販売とは薬局や店舗にある一般用医薬品と、毒薬や劇薬を除く薬局製造販売医薬品を、インターネットやカタログ、郵便等により販売することです。

特定販売についても、販売方法やサイトなどへの掲示事項などが決められました。特定販売を行うには変更届と「特定販売に関する事項」(様式2)を、事前に保健所に提出しなければなりません。一般用医薬品は第一類・第二類・第三類ともに、改正された薬事法の下でネット販売が可能になりました。

特定販売と郵便等販売

郵便等販売は旧薬事法で使われていた言葉です。2013年(平成25年)の改正によって、特定販売に改められました。特定販売は品物の特殊性から通信販売とは分けられていますが、「郵便等」は通信販売を規制する特定商取引法の第2条の中にも出てきます。

通信販売とは販売業者や役務提供事業者が、郵便等によって売買契約や役務提供契約の申し込みを受けて、商品などの売買や役務の提供を行うことです。郵便等に含まれるものには、郵便と信書便、電話機やファクシミリ装置、そのほかの通信機器があります。

情報処理に用いられる機器を利用する方法と電報、預金や貯金の口座に対する払込みのいずれかも該当します。

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インターネットで一般用医薬品を買うときの注意点

医薬品のネット販売ができるのは、薬局か店舗販売業の許可を取得した有形の店舗だけです。サイトに実店舗の写真や、許可証などの記載事項があるかを確かめましょう。厚労省のホームページから、許可を受けている事業者を確認できます。

販売サイトには連絡先があるので、購入した医薬品で不具合などが発生した場合には販売店に連絡します。

インターネットで一般用医薬品を売るときの義務

薬局や店舗が特定販売をする際は保健所に必要な届出をしたうえで、販売サイトに薬事法の必要事項を掲示します。特定販売を行うことを広告する際にも、必要事項が決められています。販売サイトの閲覧にパスワードが必要なときは、パスワードを保健所に届け出なければなりません。

インターネットでの医薬品の売買は正しく行おう

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一般用医薬品のネット販売は、紆余曲折を経て、2度の薬事法改正によって実現しました。具合の悪いときに、外出することなく医薬品を買えるのは助かりますよね。薬事法上の用語も、郵便等販売から特定販売へと改められています。

医薬品を販売する側も購入する側も、特定販売のルールを守って安全に便利に医薬品を売買しましょう。