注意すべき薬事法(薬機法)のポイントとは?運送業者が医療品物流を始める際の注意点

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必要とする人の元へ医療品や医療機器を届ける医療品物流には、運送業者の手助けが欠かせないものとなっています。しかし、運送業を営む者であれば、誰もがすぐに医療品物流の仕事を始められるわけではありません。なぜなら薬事法による制限があるからです。

今回は、運送業を営む者が医療品物流を始める際に注意しなければいけない薬事法のポイントについて解説します。

薬事法に抵触しない広告表現とは?

薬事法(薬機法)とはどんな法律?

「薬事法」(現在の略称は薬機法。正式名称「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)は、日本国内における医薬品や医薬外品などの運用ルールを定めてある法律のことです。医薬品や医療機器などの品質・安全性・有効性などを確保することで、保健衛生の向上をはかることを目的として制定されました。

医療品を運送するだけなら薬事法(薬機法)の適用対象にはならない

薬局や病院、調剤薬局など、さまざまな場所で医療品や医療機器は用いられています。それらの取扱いや販売などは薬事法によって厳しく制限されています。ですが、医療品や医療機器などを運送業者が運ぶ場合にまで薬事法が適用されるわけではありません。

なぜなら、運送は医薬品などの営業・販売・製造とは異なる仕事であるからです。薬事法の第一条の四における「医薬品等関連事業者」の例示においても、運送業は含まれていません。しかし、医療品や医療機器には、その性質上特別な状態で配送しなければならないものが多くあります。

例えば、原材料にアミノ酸が用いられているインスリンやGLP-1受動体作動薬のようなものは、一定温度下で配送をしなければ品質悪化を招く場合があります。また、医療機関到着後にはその種類や数に間違いがないかを十分にチェックしなければなりません。

そのような体制を整えるために、運送業者が医療品運送をする際には、事前に薬事法に則った医療品物流に関する備えをすることが一般的となっています。

医療品物流とは?

医療品物流とは、医薬品や医療機器などを取り扱う物流業務のことを指します。物流とは、生産者から消費者にまで物が届く経路、あるいはその流れのことです。荷物の配送だけでなく、倉庫への物品の保管や管理、梱包や仕訳、流通加工といったものも物流に含まれます。

運送業の仕事となるのは主に物品の配送です。しかしながら、その過程において梱包・仕分け・入出庫管理といった業務に携わることが少なくありません。薬事法はいくつかの規定によって物流に規則を設けています。運送業者が医療品物流に関わる場合には、それらの規則を遵守しなければなりません。

運送業の一環として医療品等を保管あるいは管理しなければならない場合、医療品などの製造許可が必要なので注意してください。例えば、医薬品の保管や管理には「医薬品製造業許可」、検査薬や体外診療薬の保管および加工には「体外診断用医薬品製造業許可」が必要です。

許可の取得には、薬品を送付する側に薬剤師免許を取得する者がいなければなりません。なお、医療品物流を担うには、厚生労働省への申請も必要です。

医療品や医療機器などの保管場所の条件とは?

保管場所にも決まりがあり、次のような条件を持った場所でなければなりません。1つ目は、換気設備が整っており、衛生状態がよい清潔な空間であることです。2つ目は、居住空間や不潔な場所(トイレのような場所)から切り離された保管場所であること。

これは、医療品や薬品を取り扱うための絶対条件だといえるでしょう。3つ目は、保管場所として13.2平方m以上の広さで、60ルックス以上の明るさが維持されていることです。

業務が適切に行える広さと明るさを確保するための条件です。また、防犯に備えて鍵のかかる貯蔵設備があることが必須となっています。医療品は温度によって品質が変化するものが少なくありません。冷暗貯蔵が求められる医療品などを取り扱う場合は、上述の条件のほかに、冷暗貯蔵のための設備を用意しておく必要があります。

薬事法(薬機法)の2013年改正による「プログラムおよび記録媒体」の取り扱いについて

薬事法(薬機法)は2013年に改正され、現在の「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」へと変更されました。医療機器のIT化や再生医療に使う製品の特性に適応させるためです。この改正によって、副作用や機能に障害が生じた場合に人の生命や健康に影響を与えるおそれがあるならば、プログラムやプログラムを記録した記録媒体も、薬事法における医療機器として取り扱うべき、というようになりました。

例えば、疾病の診断・治療・予防などにつかうプログラムやその記録媒体も、薬事法の対象となる場合があります。

薬事法(薬機法)の2013年改正は運送に影響がある?

2013年における薬事法改正は、プログラムの開発および製造販売業者あるいはその記録媒体を製造する製造販売業について、医薬品医療機器等法第23条の2による許可を必要とするものです。(関連|薬事法ドットコム|薬事法ドットコム

そのため、一見すると運送には影響がないかのようにも見えます。しかし、プログラムの記録媒体は、国内における最終製品の保管工程についての情報も登録しておかなければなりません。運送とともに保管場所の提供をしている場合には注意が必要です。

なお、管理業務の際にラベル張りや封入作業をする場合には、ほかの医療品や医療機器の場合と同じく、物流倉庫において製造業許可を取得しておかなければなりません。

厚生労働省医薬・生活衛生局長通知(2022年)と運送の関係性について

薬事法に留意事項として示されていた「オンライン服薬指導関係」について、2022年3月31日付けの通知(薬生発0331第17号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)によって、厚生労働省の基本的な考え方が示されました。

それによると薬剤の交付について『薬剤の郵送又は配送を行う場合には、薬剤師による患者への直接の授与と同視しうる程度に、当該薬剤の品質の保持や、患者本人への授与等がなされることを確保するため、薬局開設者は、あらかじめ配送のための手順を定め、配送の際に必要な措置を講ずること。

』となっています。これによって、患者の了承を得れば、薬剤を患者個人へ配送することが可能になります。しかし、それには「確実に薬剤が患者へと手渡された」ことが確認できなくてはなりません。現在のところ薬局側が電話およびメールで本人に受領を確認し、さらに運送業者の配達記録を確認するという2重のチェックが一般的となっています。

調剤薬局から個人宅へ薬剤の運送をする場合は、事前に薬局側と配送や確認の手順を取り決め、必要な体制を整えるようにしましょう。

医療品物流では薬事法(薬機法)に基づく製造許可に注意!個人への運送では確認・配送方法の打合わせが大切

医療品や医療機器などを運搬すること自体は薬事法(薬機法)の適用を受けることはありません。しかし、医療品物流を本格的に手がける場合には薬事法に注意しなければなりません。医療品や医療機器の保管や管理が必要な場合は、薬事法(薬機法)によって保管や管理をする品に応じた製造許可が必要になります。

また、保管場所の大きさや明るさについての取り決めもあります。なお、2022年の通達により調剤薬局から個人宅への薬剤運送が可能になりました。個人宅への薬剤運送の依頼を受ける際には、受領確認の方法や配送方法について、薬局側と綿密に打合せをしておくようにしましょう。